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アフリカ大陸編
 

1: オーケストラ・バオバブ「オン・ヴェラ・サ」
PB:どこがセネガル? サルサじゃないか、って文句がでそうですが(笑)。友達に『パイレーツ・チョイス』というアルバムを聞かせてもらってすぐにはまったグループで、これは彼らが15年ぶりに再結成して、2003年に出したアルバムです。すぐそこのクラブクアトロでも来日公演があったんですが、もう完璧に打ちのめされましたね、このグループには。そのときの僕のベスト・ワンのアルバムでした。今のセネガルでこういう音楽がたくさん演奏されているということではなくて、1960年代、70年代に、セネガルにかぎらず西アフリカでキューバの音楽が一世を風靡したわけですね。同じキューバ音楽といっても、キューバ人よりもアフリカの人たちがやってくれたほうがぼくは気持ちよく感じます。

関口:アフリカ好きとキューバ好きというのはちょっと体質が違っていて、両方好きという人はあんまりいませんよね。

PB:ぼくはちょっと変わり者だからね(笑)。

◎Orchestra Baobab『スペシャリスト・イン・オール・スタイルズ』(ワーナーミュージック・ジャパン)より


2: チョーン・セック「Assalo」

北中:これもまたセネガルらしくないのを選んじゃいました。このチョーン・セックはオーケストラ・バオバブにもいたことがあるんですけども、ユッスー・ンドゥールのもっと先輩にあたる人なんですね。5、6年前からセネガルとエジプトとインドを股にかけたようなプロジェクトでアルバムを作ろうと考えていて、それが出たのが今年なんです。去年ちょうどユッスー・ンドゥールが『エジプト』っていうアルバムを出しましたが、プロジェクト自体はこっちのほうが先に始まったものだと思います。西アフリカではけっこうインド音楽やインド映画が人気あるんですよ。常設の映画館があったりして。チョーン・セックは子供の頃からその辺が好きだったらしくて、今日はインドっぽい曲を選んでみましたが、すごくアラブ的な要素とセネガルの文化がミックスされたような曲もあって、非常におもしろくて、今年出たアフリカのアルバムの中でも僕はとても好きなアルバムなんです。

関口:いわゆるグリオなんですよね?

北中:出身はグリオなんですけども、ンバラというセネガルのメインストリームのポップスの基礎を築いた人ですね。キューバ音楽も体験してきた人です。

◎Thione Seck『Orientation』(Stern's Africa)より


3: モリ・カンテ「サブ」

関口:これはギニアの音楽ということになりますか?

PB:そうですね。ちょうどぼくがワールド・ミュージックを聴き始めた頃に、モリ・カンテの「イェケ・イェケ」がフランスを中心にベストセラーになったんですけど、その曲が入っていた『アクアバ・ビーチ』というアルバムのエレクトロニックなリズムの取り方にはからだが付いていかなかったんですけど、でも、モリ・カンテの声と、コラというアフリカの楽器に魅力を感じました。エレクトロニカ抜きの音楽をやってくれないかなと思ってたら、去年、この『サブー』っていうアルバムを出してくれた。これはほとんどアクースティックなサウンドになってます。といってもけっしてトラディショナルな音楽ではなくて、モダンで、ビートの相当激しい曲もあるんです。モリ・カンテはかなり有名なグリオの家系です。もともとアフリカの文化は文字を持たなかったわけですから、歴史を伝える役割、しかも音楽を用いて伝える人たちを、フランスではグリオ、向こうではジャリと言います。これは世襲制で、お父さんから息子に伝えられるものですね。モリ・カンテはそういう生まれの人です。

関口:ワールド・ミュージックを聴いていた人たちの間では彼の名はかなり早くから知られていましたが、活動を始めて30年ぐらいですか?

北中:サリフ・ケイタが抜けたあとのレイル・バンドの時代からですから、30年近いですね。

◎Mory Kante『サブ』(ライス・レコード)より


4: サリフ・ケイタ「ラージ」
関口:お二人が共通して選んだ唯一のアルバムがこのサリフ・ケイタ『ムベンバ』ですが、お二人が選んだ曲は違ったんですね。この曲は北中さんのチョイスです。

北中:さっきちょっと話に出ましたけども、87年にアイランド・レーベルから『ソロ』というアルバムが、ワールド・デビューというかたちで出たときに、まずみんな、サリフの声に驚きましたよね。とにかく音圧がすごくて、声だけでぶっ飛んだ。サウンドもアフリカの伝統的な要素を、当時の電気楽器を使ったオーケストレーションとミックスしてうまく聴かせていた。聴いてると金縛りにあっちゃうような、そのぐらいのインパクトがありました。この新しいアルバムは伝統的な楽器をうまく使いながら音響的に新しいことをやってるのがすごく良いと思います。ヴォーカルもいい具合に枯れてきて聞きやすくなった、でもグルーヴはすごくある。そういう作品ですね。

関口:ピーターさんはこのサリフ・ケイタをどういうふうに聴いてこられました?

PB:この人、ちょっとおもしろいのは、本当は歌を歌うはずじゃなかった、ということですね。彼はケイタ家の末裔で、ほんとうは貴族なんですね、向こうの社会では。貴族の人はプロとして音楽をやっちゃいけないんです。ところが彼はご存じのとおりアルビノで、肌の色がほとんど白に近いので、家族からもあまり相手にされなかった。それで勝手に音楽を始めちゃった、ということらしいです。

北中:学校の先生になろうと思ってたみたいですよ。でも音楽のほうが好きだったし、才能もあったってことですよね。

関口:アルバムはかなりたくさん出てますよね?

北中:ソロになってからこれで7枚目。その前に彼はレイル・バンドと、アンバサデュールというマリの有名なふたつのバンドを渡り歩いたんですけども、その当時の音源もCDになってるし、あとシャンソンばっかり歌ったアルバムなんかもありますよね。

◎Salif Keita『ムベンバ』(ユニバーサルミュージック)より


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