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5: 「Sean Sa Cheo / The Shepherd's Daughter」ヴィニー・キルダフ

M:これはテンポを上げすぎた例(笑)。

S:お聴きになっておわかりになるように、吹いているのはブリキ製の縦笛、ティン・ホィッスルです。土産物屋に行けば1000円程度で買えちゃいます。

M:さきほど言い忘れましたが、イーリアン・パイプのドローン、アイリッシュはこれが大好きなんですね(笑)。

O:なぜかイングリッシュは好きじゃない。

M:このドローン、従来ほかの楽器では再現できませんでした。代わりになるのはオルガンぐらいしかなかった。ところが、1980年代になって大革命が起きます。デジタル・シンセサイザーの登場です。デジタル・シンセが適当なノイズを載せてイーリアン・パイプのドローンを再現したんです。ここから、「集団幻想」としての「ケルティック・ミュージック」が出現しました。アンビエントやニューエイジと結合して売れ始め、結局“トリノ”まで繋がったというわけです。ですから、イーリアン・パイプがある意味で「ケルティック・ミュージック」の原点なんですね。

 

6: 「スタンピ」クラン

S:クランは3人組のグループで、来日したこともあります。

O:いま聞いていただいているのはアイルランド語の歌です。タイトルの意味も、なにを歌っているのかも判りません。たぶん中世の古楽に近いのではないかと思います。ここではコーラスを聴いて欲しいのですが、じつはアイルランドの音楽には伝統的にコーラスという考え方はなかったんです。それが、70年代以降ここまで来た、という実例です。

S:スケールの大きいコーラスですね。聴かれたことのある方は思い出していただけるとすぐに分かると思いますが、チーフタンズもアルタンもコーラスは一切やってませんよね。

M:ひとつ訊きたいのは、なぜこのアルバムをシェル・タルミーがプロデュースしてるのかってこと(笑)。

O:シェル・タルミーっていうのは、ザ・フーやキンクスなど60年代のブリティッシュ・ロックのプロデューサーなんです。クランのリード・ヴォーカルのショーン・コーコランが仏ブルターニュのフェスティバルでシェルと会って、プロデュースを依頼したらしいんです。タンバリンを叩いて参加もしています。

 

7: 「オミース・ミュージック」ラ・ルー

O:ジェリー・オコナー(Fiddle)とエイスネ・ニ・ウーラホーン(vo)の2人からなるグループです。ここではアイリッシュの特徴であるマウス・ミュージック、つまり口三味線の一番面白い例を聞いていただきます。もともとアイルランドの「わらべ歌」で、5曲のメドレーで最後の曲にだけフィドルが登場します。そのフィドルが突入する瞬間の曲調の変化が素晴らしいんです。

S:こういう曲のつなぎ方はアイリッシュ・ミュージックの醍醐味のひとつですね。

 

8: 「Carraroe / Portroe」P.J.ヘイズ

9: 「Carraroe / Portroe」マーティン・ヘイズ&デニス・カヒル

M:次は親子で同じ曲をやっている例を聴き比べてみましょう。父親がP.J.ヘイズ(59年録音)、息子がマーティン・ヘイズ(99年録音)。二人ともイースト・クレア出身のフィドラーです。決して飛ばさず、やさしく丁寧に聞かせるのがクレア・スタイルの特徴です。父親はケイリー・バンドの編成のなかで演奏してますから、さほど目立ちませんけど、息子のほうはクレア・スタイルを強調しまくってます。

S:茂木さんはご自分もフィドルを演奏されるので仰りたいことがたくさんありそうですね。マーティン・ヘイズほど豊かな表現力を持つ音楽家は、世界にもそうはいないんじゃないでしょうか。

 

10: 「Oiche Fa Fheil' Bride= On Brigid's Eve」スーザン・マキュオン

O:スーザンは現代アイリッシュの最先端をいく歌い手です。ダブリン生まれでニューヨークに住んでいます。

S:バックの楽器はハープですね。

O:おそらくジャズのミュージシャンでしょうね。スーザンは俳優志向でもありますが、やはり音楽に惹かれて、いろいろなミュージシャンと出会ったんだと思います。このアルバムは先月末に出たばかりの4作目ですが、彼女のアルバムはどれもいいですよ。

 

11: 「An Draighnean Donn = The Blackthorn」ラサリーナ・ニ・ホニーラ

O:これはシャン・ノースというスタイルで、無伴奏の歌です。

S:このアルバムはレコード会社から発売されているものではなくて、ラサリーナが個人で出しているいわゆる私家盤なので、少し手に入りにくいかもしれません。

O:彼女の生まれは、アイルランドの西の果てに浮かぶアラン島で、年齢は20代半ばです。

 


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