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  18: 「ダブリン・フェア/ザ・ボーイズ・オブ・ウェクスフォード/ギャロウェン」ワッピング・アイリッシュ・フルート・ドラム・バンド

M:これは100年以上の伝統がある素人バンドです。ワッピングというのはロンドンの東の外れの地区で、港湾労働者が大量に暮らしていました。そこに、1845年の大飢饉以降アイルランドから大量に移民が上陸し、スラムを形成したんです。本国から神父を連れてきて教会を建て、コミュニティを作って音楽を演奏したんですが、これが100年続いているわけです。1926年にロンドンの港湾労働者が大ストライキを打った時、ワッピングのアイリッシュが演奏しながら応援に駆けつけたそうです。この演奏は、そういったワッピング・バンドの1990年のストリート録音です。

S:これはなにも言うことはないですね(笑)。最後のほうはトルコの軍楽隊みたいでした。

 

19: 「フェアリーテイル・オブ・ニューヨーク」クリスティ・ムーア

O:ポーグスのシェーン・マガウワンの最高傑作をクリスティ・ムーアが歌っています。彼はアイルランドの春日一郎、北島三郎、東海林太郎に桑田佳祐を足したような人です。会場のポイント・シアターは8,000人を収容するスタジアムで、ボブ・ディランやローリング・ストーンズなども登場した場所です。ここをクリスはギター1本で制覇しています。最初に“しゃべり”があって、彼が聴衆を一気に掴んでしまう感じがわかります。

S:いまだ来日していない中では最大の大物。

O:アイルランドでは心の琴線に触れるんだけど、国外では理解されないんですよ。
S:70年代にドーナル・ラニーたちとプランクシティをやっていた人ですね。

 

20: 「ホエン・アイリッシュ・アイズ・アー・スマイリング」
      ジェームズ・モリソン

M:ずっと不況にあえいでいたアイルランドからニューヨークに逃げて来た人々は、そこでも酷い目にあったんですね。でも、そんな中からはい上がった人々が20世紀の始めにいたんです。そういう人々が夢を託した歌が、この“When Irish Eyes Are Smiling”。1915年に作られたアイリッシュ・アメリカン讃歌なのですが、この曲、ほとんど録音されていません。通販でよくあるような、レコード会社による企画物には含まれているのかもしれませんが、私の知る限りまともに演奏しているトラックは、スライゴー出身の名フィドラー、ジェームズ・モリソンのこれぐらいしかありませんでした。

 

21: 「ホエン・アイリッシュ・アイズ・アー・スマイリング」
      フランク・ザッパ

M:なのに、1988年になって1人だけ、この曲を録音した人が登場しました。よりによってコイツかよ!って感じですが(笑)。録音日は3月17日、つまりセント・パトリックス・デイです。

 

22: 「ブース・ショット・リンカーン/ハングマンズ・リール」
      コーデリアス・ダッド

M:メイン州で活動を始めたラモーンズ風のパンク・バンドの4枚目のアルバムです。いつのまにかユニークなアイリッシュ系バンドになりました。フレンチ・カナディアンによって作られた曲を、アイルランドくさく聞かせています。途中で“ディドリング”(口三味線)を挿んでいます。

S:ディドリングってアパラチアの伝統にもあるんですか?

M:ありますね。ただこの“Hangman's Reel”っていう曲は、フィドラーが腕を見せるショー・ピースなんです。それをディドリングで邪魔されたら普通は怒るんですけど。それとパーカッションは、クレジットがないんですが手で叩いてピッチが変えられる楽器です。パンクから出発した連中が、約束事に最初から囚われず、好き放題にやって成功した好例だと思います。私たちの間では大変評価が高いんですが、まったく評判にならないんですよね。

O:自分たちのレーベルで出してますね。歌が非常に面白いのでぜひ聞いてみて欲しいです。

 

23: 「ザ・パーティング・グラス」上野洋子

O:この“Parting Glass”という曲は、楽しい時間はこれでお終い、というときに流す曲で、アイルランドではパブの閉店の合図代わりです。ザバダックの上野洋子さんのアコーディオンと歌ですが、彼女はソロになってからどんどんルーツに帰って非常に真面目にトラッドに取り組んでいます。“こぶし”は完全に日本です。そのへんも聞いてもらえれば。

S:一時のアイルランド・ブームは去りましたが、今日は『リバーダンス』『ケルティック・ウーマン』などケルトとして括られるイメージにとどまらない、アイリッシュ・ミュージックの幅広さ、懐の深さを改めて感じました。


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