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6: 「トゥ・コンスエロ」テカメリ

I:これもルンバ・カタラーナなんですけど、カタルーニャはスペインだけじゃなくてフランス側にもちょっとはみ出てまして、これはフランス側のカタルーニャ、 Perpignan に住むジタン ( ヒターノ ) のグループです。

音楽はスペイン語で歌うことが多いけど、ふだんはカタラン語を使っている人たちです。南仏のオクシタン文化圏にもフランス語とはぜんぜんちがう原語がありますが、カタラン語とオクシタンの言語はルーツが同じということもあって、カタルーニャから南フランスにかけての地中海沿岸には連続性のある対抗文化圏ができています。

内戦のときにフランコの独裁を逃れるようにカタルーニャの人がピレネー山脈を越えてフランス側に入ったり、といった交流もあって、フランス側のカタルーニャにスペインのほうからヒターノ −− フランスではジタンと呼ばれるんですけど −− が移民していったり、そういうフランス側のカタルーニャから出てきたヒターノのグループ、テカメリの1994年の録音を聴いてもらいます。

S:フラメンコ研究者はカタルーニャ・フラメンコとして彼らを紹介しますけど、明らかにこの歌のスタイルはフラメンコのカンタンテを踏襲してますよね?

N:ただ、ルンバ・カタラーナはメインストリームからするとかなり傍流だし、もっと大衆的なものですね。カタルーニャからも今はメインストリームの、たとえばパコ・デ・ルシアのバンドでやってるドゥケンテのように優れたフラメンコ・ミュージシャンが出てきてるんですけど、もともとはこういうルンバ・カタラーナのような音楽が主流だったんです。

 

7: 「ジョ・ソイ・ラ・ルンバ」ペレット

N:ルンバ・カタラーナってもともと下層の人たちが聴くような、言ってみればダサい音楽だったんですけども、それをオホス・デ・ブルッホたちがヒップホップの要素などを取り入れていきなり前衛的なものにしたのがいまの状況としてひとつあります。

これは、石田さんがさっきかけたルンバ・カタラーナの王様、ペレットの2000年の曲で、バルセロナ新世代を代表してきたバンドの一つ、ドゥスミンゲトとの共演ナンバーで、サルサやクンビア色を押しだしもの。マカコ&オホス・デ・ブルッホやバスクのフェルミン・ムグルサ、デヴィッド・バーン、サージェント・ガルシアといった、バルセロナ新世代やまったく文脈の違うポップ・シーンのスターたちと各曲ごとに共演したアルバムからのものです。

ペレットはその後、NYのオルタナ・ラテン・ユニット、ジェルバ・ブエナのセカンド・アルバム『アイランド・ライフ』にゲスト参加したりもしています。オホスの登場もあって昔からのスターもあがめられるようになった、というわけです。

 

8: 「メ・ボット・パ・カチンバンバ」パトリアルカス・デ・ラ・ルンバ

N:ルンバ・カタラーナのベテラン・オジキ歌手たちが5人結集した新録で、リリース元のキャッチコピーに曰く「ルンバ・カタラーナ版ブエナ・ビスタ」(笑)。

ヒットしたコンピレーションCD『バルセロナ・ラバル・セッションズ2』にも収録されたこの曲は、新世代を代表してダニ・マカコが参加、スクラッチなどを加えて旧世代との橋渡し役を果たしています。後半につなげるという意味で『ラバル・セションズ』に収録されている曲を選んでみました。

S:ここまでが導入部としてカタルーニャの音楽を概観してきた感じですね。後半はいま現在のバルセロナ音楽がラバルをキーワードにして動いている、というあたりを聴いていきたいと思います。

 

9: 「ルナリ」オホス・デ・ブルッホ

I:この曲では後半にセネガルのラップ・グループ、ダーラ・Jが参加していて、彼らの言葉ウォロフ語でラップしてます。

収録されているアルバムは今年発表したばかりの最新作で、タイトルの “ テチャリ ” とは、ヒターノの言葉カロで “ 自由 ” という意味です。オホスはみなさんもご存じのとおり、今のバルセロナ・シーンをいちばん代表するバンドとして群を抜いた存在です。

去年来日したので行った人もいると思いますが、暮れに僕はバルセロナで新作が完成したあとの初めてのライヴを見ました。来日公演と違ってキューバ人のトランペッターが加わって、ベースも太くなって、前作『バリ』に比べるとだいぶファンキーになっていました。ギターのラモンはヒターノで、そこにキューバ人も加わって、正しくルンバ・カタラーナの道を発展させていますね。ますますバルセロナらしい混沌さが増して良い感じになってきてると思います。

オホスは定型化したフラメンコとはまったく異なる音楽を指向したので、ほかのヒターノからは反感を買っていたようです。今はオホスが成功して知名度も上がってきたので、彼らが選んだ道の正しさが認められて、とても良かったなと思います。それとやはり、魅力的なのはマリーナの歌とパフォーマンスですね。ファンクとヒップホップとフラメンコをミックスした音楽を直感的に乗りこなしています。

 

10: 「イングラビット」マカコ

N:マカコは、「猿」とか「ちび」という意味がある言葉で、バンドを率いるダニ・マカコが落ち着きのない子供だったことに由来するらしいんですが、オホスのファースト・アルバム『ベンゲ』や『バリ』にも参加しています。

それ以外にもラテン・アメリカのロス・デ・アバホっていうのをプロデュースしていたり、日本でもちょっと話題になったカルロス・ジーンにゲスト参加していたりとか、シリアのトランペッターでマヌ・チャオのバンドにもいるロイ・パチと一緒にやったりしていて、いろんなところに出没するバルセロナ・ミクスチャー音楽シーンのトリックスター的存在だと思っています。

自らムンド・スルド −− スルドは左利きの意味とたぶん政治的にも左っていう意味と、サンバの低音打楽器スルドーにも掛けた名前ですね −− というレーベルを立ち上げて、そこから自作以外にもヌーブラのアルバムもリリースしています。

このアルバムは、今年出たばかりの自身のグループでの4作目なんですけど、この曲はブラジルのナサゥン・ズンビとラッパーのBネガゥンがゲスト参加している曲を、ヒップホップを経過したマンギ・ボートとルンバ・カタラーナのミクスチャーです。

 


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