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10: 「ムンケラ」ジャンカ・ジャバテ

K :サリフ・ケイタが『ソロ』を出した頃、不景気になってしまったとはいえアビジャンでも脈々と続くグリオの伝統をバックグラウンドに持つ歌手が活躍していました。このジャンカ・ジャバテは売れっ子プロデューサーが手がけたギニアの出身の人気歌手です。

S :彼女はモリ・カンテがコーラス要員としてパリに呼んだんですよ。「イェケ・イェケ」も彼女がひとりでコーラスしてます。

K :なるほど。この曲はアフリカのコミュニティの内側でわりとドメスティックに流行りましたよね。

S :この人はグリオ出身の歌手だけど、グリオとは関係なくポップスを歌っている曲ですね。“ムンケラ”は「どうしたんだい?」っていう意味で、二人目の子供がなかなかできなくて悲しいと女性が嘆いている歌。

K :ウム・ジャバテもそんな内容の歌を歌ってますね。

S :現代社会でアフリカの女性が抱える問題を一人のシンガーとして歌っているわけです。じつはうちのかみさんのお母さんの妹がウム・ジャバテで、ジャンカ・ジャバテはかみさんのお母さんの従姉妹なんです。だからギニアに行くとかならず挨拶に行くんですね。行かないと、ほんとに怒られるんです。「鈴木はわざわざ日本から来たのにうちには寄っていかなかった」って(会場笑)。余裕がある時には腕時計などをお土産に持っていってご機嫌とってます。

K :西アフリカを私が旅した体験からすると、向こうではいつだれのところを訪ねていっても歓迎してくれる。お互いに訪ねあって近況を報告しあうのがひとつの文化になっているんですね。

S :だから、かみさんが日本に来たときには、「どうして誰もうちに来ないんだ」って嘆いてますよ(会場笑)。

 



11: 「キャットフィッシュ・ブルース」
       タジ・マハール、トゥマニ・ジャバテ

K :時代がポーンと飛んで、 99 年の録音です。トゥマニ・ジャバテはマリを代表するコラの奏者、タジ・マハールはアメリカのブルース・ミュージシャンですね。

S : 60 年代にアメリカで白人がブルースを“発見”してブームになりましたよね。そのときに「ブルースはどこから来たのか」が問題になったんですが、やっぱり西アフリカのグリオの伝統がブルースを作ったんだろうっていう議論があったんです。それ自体にはなんの根拠もなかったんですが、 90 年代になってから今度は黒人のブルースマンやジャズマンが、自分たちのルーツとしてグリオにアプローチする動きが盛んになりました。これはそういう流れのなかの1曲です。

K :もろにブルースですね。

S :どっちかっていうと、タジ・マハールがやってるもろブルースにトゥマニ・ジャバテが必死に合わせてるんですが、合ってませんよね(会場笑)。というのは、ブルースはペンタトニックの 5 音階で、コラはダイアトニックの 7 音階ですから、無理があるんですよ。でもこのアルバムの中にはグリオの曲にブルースマンのほうが合わせてる曲もあって、通して聴くとマンデの音楽とブルースの違いと似てるところが分かる非常にいいアルバムです。


12: 「ジャメ」コラ・ジャズ・トリオ

K :このコラ・ジャズ・トリオはグリオの人たち同士でジャズをやろうという試みのバンドです。コラはギニアのジェリ・ムサ・ジャワラ、ピアノはセネガルのアブドゥライ・ジャバテ、それにパーカッションでセネガルのムサ・シソコが3人でやってます。 2005 年に録音されたアルバムから聴いていただきました。

S :コラの名手ジェリ・ムサ・ジャワラは、ある日突然目覚めて、伝統を離れたフリー・ジャズ・スタイルでもブルースでも何でもできるようになったという不思議な人で、注目株です。じつはモリ・カンテの異父弟で、ふたりは非常に仲が悪いんですが、ジェリムサ・ジャワラがコラを始めたのはモリ・カンテの影響なんです。弟の方がお兄さんを越えちゃったという例ですね。

K :彼は“フラメンコラ”と言ってコラでフラメンコをやってみたり、ますますおもしろいことをやってくれそうですね。

S : 06 年の 1 月には日本に来て、うちのかみさんと一緒にコンサートをやったんですよ。

K :この曲にはとてもタイトなベース・ドラムのような音が入ってるんですけど、これはカラバシュという、瓢箪を半切りにして中をくり抜いたものを、厚く敷いた毛布の上に被せて叩くという楽器です。とても身近な楽器で、いろいろな儀式で女性が股のあいだに置いて叩いているのを見たことがあります。

S :アフリカの瓢箪は丸くてでかいんですよね。半分に切って中をくりぬいたものはコラの胴体になりますし、それを裏返して太鼓として叩いたりもするわけです。

K :ですから、お洒落な音に聴こえるんですけど、実はコラとピアノと、必要最小限のパーカッション、それに瓢箪というとてもミニマムな編成でジャズをやってるものなんですね。

S :これはオリジナル曲ですが、アルバムのなかではセロニアス・モンクやチャーリー・パーカーのカヴァーをやったりもしてます。



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