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15:「アリ・アリ(ロック・ミックス)」ボンベイ・ロッカーズ・フィーチャリング・オーヴァーシーズ

S:デンマークに住んでるインド系の人とデンマーク人のグループで、2003年にデビューした人たちです。いわゆるバングラですね。

I:古典的というか土着的なバングラの曲を彼らなりにリミックスしたバージョンで、ヒップホップの影響もとても感じられるんですけど、一味違うなあと思うのは、この重たいロック的なリズムですね。

S:ヘビメタ・バングラ。

I:そんな感じが私はすごく気に入ってて、バングラの新しい波ということで、聴いていただきました。

S:僕もこの曲大好きです。DJで使います、これ。グナワとDJミックスしたりして。バングラはもともとパンジャーブ地方の民謡なんですけど、イギリスにパンジャーブ系の移民が多かったのと、もとからダンス・ミュージックだったのとで、80年代に入ってすごく流行していったんですね。

I:イギリスに住んでた南アジア人が置かれた環境も影響してるのかとも思うんですけど、おもしろい音楽ですよね。

S:バングラで一番人気のある歌手は、イギリスで10万枚とか売れるんですけど、インド人向けの店にしか置いてないので、チャートには出てこない。だから1950年代のアメリカでのレイス・レコード(人種レコード)みたいな扱いをされてます。

I:それでもイギリスに行ってみると、日本で考える以上に知名度は高いです。ロンドンの中心部の店にも置いてあるし、白人のグループの方もどんどん影響を受けてますよね。

S:BBCにもインド・チャンネルができましたもんね。

I:そう、BBCのインド・チャンネルで大ヒットしたドラマがあって、その主役が白人のあいだでも人気が出たり、我々の想像以上に交流は進んでいるようです。

S:バングラっていうジャンル以外にも、エイジアン・アンダーグラウンドもしくはエイジアン・マッシヴというジャンルもあります。どちらも海外のインド系の人たちが中心になったクラブ・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックなどと融合したムーヴメントです。

 

16:「 リバース 」ミディーヴァル・パンディッツ&アヌーシュカ・シャンカル

S:これはインドから最初に世界デビューしたエレクトロニック・ミュージックのグループ、ミディーヴァル・パンディッツの曲で、ラヴィ・シャンカルの娘、アヌーシュカ・シャンカルが参加してます。インド版の「ニューズウィーク」みたいな「インディア・トゥデイ」っていう雑誌があるんですけど、それの2005年の30周年記念号で、この「今年30歳になるインドの勝ち組30人」という特集があって、その中に女優のスシュミタ・セーンとかプリティー・ジンターとかと一緒にミディヴァルパンディッツのタパンっていうプロデューサー・DJも載っていて、そういう勝ち組なんですね。

I:そういう勝ち組には勝ち組になるだけの教養と、生まれ育った家の環境がすごく大きくて、インドで勝ち組になれる可能性があるのは人口の2割ぐらいの中間層以上の人々だけです。それでも10億のうちの2億でしょ。日本の人口より多いんです。

S:ほんとそうですよね。えーと、エイジアン・アンダーグラウンドはクラブ・ミュージックなので、基本的には激しい曲が多いんですけど、これは穏やかな曲をわざと選んでます。アヌーシュカがなぜこういうことやるかというと、インドでは彼女のお姉さんにあたるノラ・ジョーンズもインド人として扱われて、毎日のように新聞に載ってるんですね。

I:ノラ・ジョーンズ嫌がってるそうですけど。

S:それでお姉さんに負けないようにと思って、ポップな音作りにトライしてみたんじゃないかな、と。エイジアン・アンダーグラウンドの中ではこういうアンビエントな感じの音も出てきつつあって、これはよく出来てますよね。

I:ベッド・ラウンジ・ミュージックっていうか、大人が、踊らずに静かに聴けるものに注目が集まってますしね。

 

17:「 タットヴァ 」クーラ・シェイカー

I:今聴いてもらってるのは、クーラ・シェイカーっていうイギリスのロック・バンドです。90年代にブリット・ポップ・ムーヴメントのなかで出てきたんですけど、日本でも知名度は高いほうだと思います。

S:フジ・ロック・フェスティヴァルにも出てるくらいですもんね。

I:これは彼らの代表的なヒット曲で、今聴くと古臭くてダサいんですが、当時はサイケデリックな味わいというか、最初にかけたビートルズみたいな、私のルーツである60年代のロックの雰囲気をすごく感じて、大好きだったんですよ。

S:僕も10年前、フランスに留学してたときに、MTVを見てると毎日これとオアシスがかかってましたよ。

I:オアシスよりこっちの方が好きなんです。

S:彼らは一度解散しちゃって、最近また再結成したんですよね。

I:私、すごく楽しみにしてるんです、新しいアルバムが出るのを。

S:この歌詞はサンスクリットみたいですが?

I:そうですね。「タットヴァ」っていうタイトルも「真理」といった意味の言葉です。その辺にも60年代的な行動パターンが見えて、また惹かれる部分でもあるんですけど。

S:インド音楽っていろいろな形で、他の国のポップスに影響を……

I:与えてますよね!

S:でも取り込むのはものすごく難しい! ほかの国の音楽はたとえば3コードでできちゃったり、打ち込みでも作れちゃったりするじゃないですか。それと比べると、インド音楽はかんたんには再現できないものですよね。

I:そう考えると、サイケデリック・ロックって、インド音楽の取り込み方という点では、ロックの中で一番インパクトがあったかもしれませんね。ビートルズも含めての話ですけど。

 

18:「 花 」ASA-CHANG & 巡礼

S:僕が最後に用意したのは、ASA-CHANG & 巡礼の「花」。彼らの5年くらい前の曲なんですけど、タブラを叩いてるのが湯沢くん、U-ZHAANっていうんですけど、僕の本のカルカッタ編にも登場します。これ、生演奏なんですよ。

I:そうです(笑)。

S:湯沢くんのタブラの音そのものは今のほうがだんぜん良いんですけど、インド古典をこんなふうに使うなんて、インド人には無い発想でしょう。

I:このアルバム、私はジャケットに魅かれて買ったんです。初めて聴いた時に、日本人だなあと思いました。それと、アバンギャルドだな、とも。

S:白人だともっと大雑把にフュージョンしちゃいそうなんですけど、こういう取り入れ方は日本人じゃないとできない気がして、すごくおもしろかったですね。

I:ある意味では、新しいラップってことになるんじゃないですか?(笑)

S:拍子取ることも無理ですけど(笑)。これは16拍子ってことでいいのかな? 白人が60年代にラーガ・ロックとして4拍子に置き換えてギターを使ってコード進行のないサイケデリックな音楽を作ったわけですけど、日本からはまったく違うインド音楽の演奏方法が出てくるんじゃないかと思うんです。これからインド音楽が日本ではますます広まるんじゃないかということで、きれいにまとめたいんですけれど(会場笑)。

I:はい(笑)。私もこれまで20年間頑張ってきましたけど、思ったよりも広まらなかったので、今こそチャンスかなあと思いつつ(笑)。このU-ZHAANに私も負けないように、若い世代ともどんどんバトルしながら、自分も磨きながらやっていきたいですね。

S:今日はインド音楽といっても、古典だけじゃないんだってあたりを感じ取っていただければと思いました。今日はどうもありがとうございました。

I:どうもありがとうございました。

 


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