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  2012年3月24日(土)
東京・渋谷 ダイニングバーLi-Poにて
論者:
関口義人(「音楽夜噺」主宰)

今回は先日出版されたばかりの「ベリーダンスの官能」(青土社)の刊行記念として、この本を書くことになったいきさつから日本のベリーダンスの過去〜現在までをお話しします。33人のダンサー・インタビューの秘話、ベリーダンスとはそもそも何なのか、そして現在世界に拡散しブームを巻き起こしている「ベリーダンス」のさまざまな様式の発展についても映像で紹介します。

| 紹介一覧↓ |


書籍

「ベリーダンスの官能」 (関口義人著 青土社)

日本で初めてのベリーダンス関連書。日本のべリーダンスの今日の繁栄を支えてきた33人のダンサーへの取材を軸に7本のコラムでは 「日本人とアラブ世界の関係」「日本に上陸したダンスの背景」「ジプシーとベリーダンスの関係性」「ガワズィーとエジプトのダンス」「オスマン帝国時代のトルコの踊り」「アメリカのベリーダンス」 「ベリーダンスとオリエンタリズム」について論じ、これまでに触れられたことのないテーマにも踏み込んだ。


「Oriental Belly Dance」 Kemal Ozdemir

トルコの社会学者ケマル・オズデミールの本書はオスマン帝国時代の宮廷の踊り手であった“チェンギ”がジプシーだった点や男性ダンサー集団”キョチェク“の踊りの性質についても解説している。 トルコの今日のショーで踊られている「ベリーダンス」の起源とそれらが結びついているのかどうかの立証は微妙である。 ターキッシュロマ(ジプシー)が20世紀に大都市郊外に集落を形成し、その集落内で踊られたロマの踊りについても数々の示唆が与えられる好著。


「Serpent Of The Nile」 Wendy Buonaventura

タイトルの「ナイルの誘惑者」とはエジプトを起源とするオリエンタルダンサーがやがて西洋(ヨーロッパ)で人気を博し、その後世界に広まったことを示す言葉である。 著者自身ダンサーでありコリオグラファー(振付師)でもあり、同時に歴史的、社会学的にベリーダンスに関する数々の研究で知られる。優れた研究書である本書には貴重なエジプト、中東、トルコなどの前世紀の踊り手の写真も豊富である。


「Bewlly Dance - Orientalism Transnationalism & Harem Fantasy」
Anthony Shay & Barbara Sellers-Young

アンソニー・シャイとバーバラ・セラーズ・ヤングの共編により10人の研究者の論文をまとめた書。 フォークロアとの繋がり、イスラーム社会でのダンサーの立場、エジプト映画産業とダンサー、中東のダンスの変遷、身体・イメージ・アイデンティティ論、ベリーダンスの霊性などに関する論文が続く。


「Grand Mother’s Secret」 Rosina Fawzia Al Rawi

著者はエジプト生まれでウィーンで育った。本書は彼女がカイロで祖母から聞かされた物語を軸にしている。そこには女性がオリエンタルダンスを踊る際の精神的、身体的な変化や成長、さらに儀式性やいやしや多産への祈願といった側面が詳細に述べられる。 さらに家族関係や子供との関係などダンスが与える家族関係への影響などが語られる。


「Bellydance」 Keti Sharif

本書はアートとしてのベリーダンスに着目し、コスチューム、化粧、身体の鍛え方、基本的なステップや動きなどを詳細に論じている。 さらにベリーダンスとさまざまなアラブ音楽(エジプト、レバノン)のみでなくギリシャやトルコの音楽との関係についても簡潔にわかりやすくまとめられている。


「Sacred Woman, Sacred Dance」 Iris J.Stewart

霊的な覚醒や神聖な儀礼への接近というベリーダンスにまつわる古典的な精神史の背景と変遷をまとめた本書はフォークロアな踊りから現代のアートダンス、コンテンポラリーにまで連なる踊り手の精神や感情との密接なつながりを解明する。



DVD

「Latcho Drom」 (1996)

フランス人の父親とスペイン系ロマの血を引く母の間にアルジェリアで生まれたトニー・ガトリフによる一連のジプシー関連作品の中でも代表作である本作は、インド、ラジャスターンの砂漠からトルコ、エジプト、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアなどのジプシーたちの演奏や踊りで綴ったドキュメンタリー的で叙情的な映画。 タラフ・ドゥ・ハイドゥークスやラ・カイータなど著名な音楽家も登場する。


「The Gypsy Trail」 (2002)

インドの砂漠民の踊りに始まってアフリカ、エジプトにおけるジプシー音楽とガワズィーという民族(ジプシーであるとされる)の踊りが見られる貴重な映像を含むほか1960年代のアンダルシアの村でのフラメンコのシーンなども興味深い。


「Artemis Dances!」 (2001)

アメリカ、ワシントン在住のダンサー/インストラクター、アルテミス・モーラーは現代におけるターキッシュ・ロマ・スタイルの代表的指導者の筆頭である。 彼女の踊りの基礎からその理論が示されているDVD。世界中で自らのダンス・スタイルの指導に当たっており日本にも数回来日している。


「Egyptian Folkloric Dances」 (1977)

オリジナルの映像はエジプトで1977年に撮影された。エジプトのフォークロアダンスの振付師、アフマド・ハリルによる指導監修による映像集。 エジプトの各地から集められたフォークロアの多様性が楽しめる。しかしこれはあくまで民族舞踊そのものでありベリーダンスとのつながりを感じるのは難しい。


「The Legend 1947-1976」 (2004)

オリジナルの映像はエジプトで1977年に撮影された。エジプトのフォークロアダンスの振付師、アフマド・ハリルによる指導監修による映像集。 相当数のベリーダンス関係のDVDを見たが、本作は最も重要な作品であろうと思われる。1940-70-年代にエジプト、カイロのショーや映画で活躍したまさにベリーダンサーの起源とも言える有数のダンサーの踊りが収められている。 登場するダンサーはTahia Carioca, Samia Gamal, Zeinat Olwi, Nagua Fouad, Soheir Zaki, Fifi Abdoなど。本作はベリーダンスの本来の姿をとらえた決定盤だと言えるだろう。


「Tribal Superstars」 (2010)

20世紀初頭にアメリカに渡ったオリエンタルダンスだが、本格的なブームを巻き起こしたのは1990年代以降の新しい流れ、”TRIBAL”が広く受け入れられたあたりからであろう。 現代的な振付と音楽によってベリーダンスはアメリカン・エンターテインメントとしても定着し、同時にそれは女性の「美」に対する現代的なニーズをもとらえて成功した。 本作には現代のトライバルを牽引するダンサーたち〜RachelBrice,Sharon Kihara, Moria Chappel, Mardi Love, Sabrina Foxなどが登場する。


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